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友樹へ



 
友樹、ほんとにいろいろとありがとう。
友樹に出会ってから、ずっと友樹には迷惑ばっかりかけて、お世話になりっぱなしで、ほんとにごめんね。
甘えん坊で、ひとりじゃなんにもできないぼくを、いつも支えていてくれて、ほんとにありがとう。
ぼくがうれしい時は一緒に喜んでくれ、ぼくが悲しい時は一緒に悲しんでくれた。
ぼくが悩んでいる時は一緒に悩んだ後に手を差し伸べてくれ、ぼくがへこたれている時は叱咤した後に励ましてくれた。
親友なんてもんじゃない。ぼくにとって友樹はお兄ちゃんみたいな存在だった。
そう言ったら、おれはそんなにフケてないって怒るかな?



友樹。友樹にはつらい約束をさせたね。
だけど、友樹はその約束を守ってくれた。一年半以上も・・・
友樹、この19日に先輩がぼくを訪ねてきてくれたんだ。
これは、友樹からのクリスマスプレゼントだね。
ぼくへの最後の・・・・・・

先輩に会えてうれしかった。もう会えないと思っていたから。
それにね、ぼく、先輩に抱いてもらえたんだ。
先輩はぼくという存在に縛られていたんだって。その拘束から解放してほしいと、わざわざこんなところまでやってきたんだ。
ぼくは、先輩が大好きだから、先輩の前から姿を消したのに、なんて皮肉なことなんだろうね。
ぼくが先輩のことを思ってやることは、いつも先輩を苦しめるんだ。
先輩は、けじめをつけるために、ぼくを抱きたいと言った。そしたら、ぼくのことを忘れると。
こんな願ってもない申し出を断る理由なんてないよね。
ぼくのことをどう思っていようと、ぼくは最後に先輩に抱いてもらうことができ、さらに先輩はぼくのことを忘れてくれるんだ!素晴らしいことだよ、友樹!



抱かれながら、ぼくは再確認したよ、この人のことが大好きなんだって!
先輩は、別れる前の優を抱きたいって言うから、ぼくは、あの楽しかった頃のぼくに戻ることができた。
でも、今も昔もぼくの気持ちに何の変わりもないから。麻野優が抱かれたことは事実だから。
何度も何度も好きって言うことができた。今まで言えなかった分、何度も言ったよ。
その行為が、もしかしたら、ぼくの命を縮めたかもしれない。
だけど、ぼくは今、とても幸せなんだ。
こんなに満ち足りたすがすがしい気分は、何年ぶりなんだろう。
最後に素敵な時間をくれた先輩と、そのきっかけを与えてくれた友樹には、どんなに感謝しても足りないくらいだよ。
ほんとうにありがとう。
月並みの言葉しか思いつかないけれど、ほんとにありがとう。



そしてね、友樹。願わくば、ぼくという存在を覚えていてほしい。
先輩が忘れても、友樹は忘れないでほしい。
ぼく、麻野優がこの世に存在し、三上直人という人を心から愛していたということを。
こんなこと、友樹にお願いするなんて、やっぱりぼくは友樹に甘えているね。
だけど、友樹だから、ぼくと先輩のことをいちばん知っている友樹だからこそ、お願いしたいんだ。
そして、たまにでいいから、麻野家の墓所に、お花を飾ってくれたらうれしい。
ぼくがいなくなったら、そんなことをしてくれる人もいなくなるんだ。それじゃ、父・母・姉が可哀想だ。
その時、憎まれ口でもいいからぼくに話しかけてくれたら、ぼくは飛び上がって喜んじゃうよ!
それと、友樹のお父さんに迷惑をかけるけれど、家のことも一切お任せするから、いいように処分してもらってほしい。
最後まで、迷惑かけるけど、ぼくと知り合ったことを恨みこそすれ、我慢してね。



そして、これがほんとうに最後のお願い。
先輩にはぼくがどうなろうと、知らせないでほしい。
ぼくのことを忘れると約束してくれた先輩に、わざわざぼくのことなんて知らせる必要はないんだ。
ぼくがどうなろうと、もう先輩には関係ない。そう願ったのはぼくだから。
先輩はぼくの家族のお墓参りには来てくれるかも知れないから、その時に会えればそれでいい。
そして、先輩は先輩の進むべき道を進み、幸せをつかんでほしい、素敵なパートナーと。



だけど、ぼくはいつも間違うから。
先輩のためを思ってやったことはいつも先輩を苦しめるから。
もし友樹が先輩に知らせたほうがいいと思うのなら、それは来年の里帰りコンサートの後にして欲しい。
ぼくは、先輩あてに手紙を書いたんだ。
ほんとにぼくは最後まで未練たらしいやつなんだ。友樹のあきれた顔が目に浮かぶよ。
ぼくの精一杯の気持ちをこの手紙に詰め込んだんだ。
もし、先輩がぼくの死を知ったなら、この手紙を渡してほしい。
これもね、友樹が渡さないほうがいいと思ったら、捨ててくれていいから。



最後の最後まで、友樹を頼るけど、友樹のすることにいつも間違いはないんだ。
いつだって正しいんだ。
ぼくはいつも間違ってばかりなんだけどね。



ぼくのお願いばっかりの手紙になってしまったね。
友樹、ぼくは先に向こうにいってしまうけど、いつだって友樹のこと、見てるから。
だから友樹、必ず幸せをつかんでください。
友樹の幸せを心からお祈りしています。



さようなら・・・そしてありがとう。

                               優






                                                                       〜Fin〜





一周年を迎える直前にピリオドを打つことができた「祈り」。
サイトのメインになるであろうお話を無事完結できて安心しました。
のでちょこっと蛇足的お話を・・・・・・


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